野付半島は道東の、知床半島と根室半島のちょうど中間くらいにある、細長い砂嘴(さし)。
広域地図は
コチラ。
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ラムサール条約登録湿地でもある。
お化けの手のような、ダラリとした形の半島が海に突き出している。
半島の途中にある駐車場からは、天気が良ければ海の向こうに国後島もハッキリと見える。
砂嘴とは、海流によって運ばれた砂が堆積してできた、クチバシのような形の島のこと。
砂という変化しやすいもののため、常に波によって形が変わり続けている。
野付半島の場合は、そこに生えたトドマツやミズナラの木が、海水の浸食によって立ったままの姿で枯れている。
木の表面はからからに乾いて白くなり、幹の部分だけが残っている様子はたしかに白骨のようだ。
標津町の国道244号線から半島に入り、左側にオホーツク海、右側に野付湾を見下ろしながらしばらく走ると、ナラワラの展望駐車場がある。
ここからは湿地を挟んで向こう岸に、ミズナラの林が立ち枯れた姿をみることができる。
双眼鏡でよくよく見てみると、立ち枯れたナラの間にアオサギの集団がいることがある。
実際にわたしも、ナラワラの写真を撮って、家のパソコンで拡大をしてみたら切り株だと思ったものが全部サギだった、ということがあった。
ナラワラへは入れないので、外から眺めるのみ。

↑ナラワラ展望駐車場から。手前の湿地にはタンチョウが。
さらにその先へと車を走らせると、2階建てのレストハウスと少し広めの駐車場がある。
ここからはトドワラまで、歩いて行くことができる。
トドワラまでの道のりは約30分。
有料の花馬車(大人片道500円・5月~10月運行)に乗れば、15分程度で着ける。
その間にはハマナスやエゾカンゾウなどが咲き誇る原生花園が続く。
すぐそこに海が見えているのに、自分の立つ陸地との間には緑の草たちが生えている、という光景はなんだか不思議な感覚になる。
海水を含んだ水でも元気に育つ植物たち、空高くでさえずっているヒバリの声。
遠くの中洲にはタンチョウやカモメが羽を休めているのが見える。

↑トドワラ手前のネイチャーセンターから、外海を見た写真。遠くにうっすら見える青い山は国後島。

↑エゾカンゾウの中を進む花馬車。

↑トドワラより続く原生花園から、海側を眺める。海と陸との間に、海水の混じった不思議な湿原が広がっている。

↑原生花園で出会った、ノゴマ。

↑原生花園に咲き誇るエゾカンゾウ。花は1日しか咲かないため、お花畑のようになるためには、相当な数がなければならないとか。

↑マルバトウキ。6月下旬~7月にかけて見られる。お花のひと房は大人の片手を広げたよりひと回り大きいくらい。
天気のいい日だと「荒涼とした」というよりは「のどかな」という表現の方がしっくりくる。
白骨化した木々も太陽の光を楽しんでいるように見える。
ここでは300種類以上の植物、200種類以上の野鳥が観察できるというから、驚く。
わたしはまだ冬のシーズンにここを訪れたことがないのだが、白鳥、ゴマフアザラシ、オジロワシなどにも会えるらしい。
ぜひいつか行ってみたい。
トドワラへは逆方向からのアプローチもできる。
標津町から少し南に下った尾岱沼(おだいとう)から、観光船(大人片道1400円・4月下旬~10月運行)が出ている。
こちらに乗ると、約30分の道のりで、アザラシとの遭遇率もいいとか?
トドワラの中には遊歩道が作られていて、立ち枯れたり、折れて横たわったりしているトドマツの白い幹を間近で眺めることができる。

↑トドワラ入口から見た、遊歩道奥のトドワラ。尾岱沼からの観光船はこの奥のトドワラ側に着く。

↑遊歩道から眺めたトドワラ。海水と風雪に浸食されて、その形は変化し続けている。

↑海水に侵食されながらも、立ち続けるトドマツ。
「石の森」の中では、主人公の訪ねた5月はシーズンオフで誰ともすれ違わない、という表現がされているが、このお話が書かれたのは昭和50年。
現在はその頃に比べて有名な観光地となっていて、5月にはたくさんの人が訪れている。
それでも、同じ道東とはいえ、世界自然遺産に指定された知床からはかなりの距離がある。
先日、指定を受けて以来初めて野付半島を訪れた際には、以前より観光バスの数は増えたように感じるものの、知床ほどではなかった。
このくらいのボチボチさ加減が、ちょうどいいという気もするけれど。
各種ネイチャーツアーも用意されている(要予約)。
詳細は
野付半島ネイチャーセンター公式ページへ。
★最終訪問日 2007年7月
北海道の写真でデザインしたポストカードあります*
海蒼 絵葉書館*