北海道遺産でもあり、世界で唯一北海道でしか行われていない競馬、ばんえい(輓曳)競馬。
2006年度までは帯広の他、旭川、岩見沢、北見の各市によって運営されていたが、興行不振によって一時は全ての地域で廃止が検討された。
結局、民間企業が一部の業務を受託する形式で、帯広のみがばんえい競馬を継続することになった。
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「馬の一発逆転ライブショー ばんえい十勝」のキャッチフレーズで生まれ変わったばんえい競馬は、もともと北海道開拓の時代に木材を運ぶ馬たちの力比べとして行われていた競争だ。
走る馬たちはがっしりとした身体に太い足で、サラブレッドのようなスマートな姿ではない。
農耕馬(ドサンコ)から始まり、フランスやベルギーなどから来た重種馬などとの交配もあって、現在では便宜上「ばんえい種」と呼ばれることもある。
レース場は200mの直線で、スタート直後に低めの、コース中ほどには高めの、小山(障害)があり、そりの最後尾がゴールラインを超えて初めてゴールとみなされる。
第二障害までは騎手が馬を止めることも許されているので、馬の力だけでなく、騎手たちの駆け引きによってもレースの流れが変わる。

↑ ゲートが開いて馬たちが一斉に走り出す。

←女性騎手も活躍している。馬と同じくらいカッコイイ。

↑ レース一番の山場、第二障害。手前で力を溜めて一気に駆け上っても、上りきれず前足が砂を掻き続けるだけになってしまうことも。
メインレース以外にも、「大学合格記念」など個人協賛によるレースもある。
1万円を1口として、個人は1口から、法人は3口から協賛することができる。
レース名に名前をつけられるだけでなく、レース後に優勝騎手の記念写真が贈られる。
競馬場では、レース以外にもいろいろなイベントが用意されていて、子供を連れた家族連れの姿も多い。
そのひとつに、バックヤードツアー(無料)がある。
競馬場の職員が、厩舎やコース裏などを解説しながら案内してくれる30分ほどのミニツアーだ。

↑ 「大人しく優しい」元ばんえい競走馬のリッキーが引く馬車。リッキーは幼稚園などを触れ合いイベントで巡回していて、地元の幼稚園生なら知らない子はいないほどの有名馬だとか。唯一の欠点は「競争心がないこと」。

↑ パドックとレース場の裏側。
奥に無数に並んでいる小さな箱のようなものは、練習用のそり。
そのさらに左奥の家は、騎手とばん馬が暮らす厩舎。
ばんえい競馬には騎手養成の専門機関がないため、厩務員として入って学び騎手試験を受ける。
右側の奥は練習場。
レース前の調整はもちろん、まだレースに参加できない若い馬たちの練習の場でもある。

↑ 日の出前から、馬たちの一日は始まる。
競馬場の入り口とは反対側にある、JA連畜産センターの駐車場から、ちょうどこのように朝陽をバックにウォーミングアップをする馬たちに出会えた。
氷点下二桁になる1月の早朝、吐く息は白く、馬たちの身体からも湯気が上がっている。

↑ 間もなくレースに出走する馬。
騎手は馬には乗らないため、鞍や鐙はつけない。
代わりにそりを取り付けるための馬具を装着される。

↑ ゴール側から見た第二障害とコース。
1つのレーンの幅は180cm、砂の深さは30cm。
砂の下にはヒーティングが施され、少しの雪なら融けてしまう。
帯広は雪の少ない地域ではあるが、それでもまとまって降る日もある。
その時は人の手によって除雪がなされる。
サラブレッドが走る一般的な競馬では、軽馬場と言えば乾燥した状態、重馬場と言えば雨が降った後などの濡れた状態を指すが、ばんえい競馬では逆になる。
乾燥しているとそりを引く馬の足が埋まりやすくなるため「重馬場」、逆に雨などで湿って固まると走りやすくなるため「軽馬場」となる。
そのため、競馬新聞やテレビなどには馬場水分が「3.9%」のように表示されている。

↑ ゴールした馬たちは、そのままそりをトロッコのところまで引いてくる。
写真の馬はたてがみをおしゃれに編んでいた。

↑ 馬によって乗せられたそりは、トロッコでまたスタート地点まで運ばれる。

↑ 戦いを終えて厩舎に帰る馬たち。勝っても負けてもその後姿は誇り高く見える。

↑ レースとレースの間のイベント、ちびっこばんえい体験レースは騎手も馬も現役。
クリスマス前だったので、騎手がサンタの格好をしていた。
声援を送るお母さんたちからは「自分も子供だったら乗ってみたかった」の声も。

↑ 夜になると気温もぐんと下がる12月。馬たちの鼻息も真っ白。
最後の一頭がゴールするまで見届けて、拍手が贈られる暖かい競馬。
スピードとギャンブルだけではない、力強くて温もりのあるばんえい競馬には、これからも北海道の大切な遺産として続いていって欲しいと願う。
★最終訪問日 2008年1月
★最終更新日 2008年1月
北海道の写真でデザインしたポストカードあります
*海蒼 絵葉書館*